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オープンエンド型とクローズエンド型のおもちゃは、どちらが子どもの発達に良いのでしょうか?
一見すると、オープンエンドのおもちゃのほうが優れているように見えるかもしれません。
創造力を育み、子どもが自分の周りの世界について学ぶことができるように設計されているからです。
しかしオープンエンド型とクローズエンド型のおもちゃにはそれぞれメリット・デメリットがあります。
親が子どものおもちゃを選ぶときには、これらのおもちゃの違いを理解しておくことが重要です。
この記事ではオープンエンド型とクローズエンド型のおもちゃの違いをおもちゃの具体例とともに紹介し、それぞれのメリットとデメリットに踏み込みます。
また、オープンエンドトイ・クローズエンドトイとシュタイナー教育やレッジョ・エミリア教育、モンテッソーリ教育など、海外の人気幼児教育理論との相性についてもご紹介します。
- オープンエンドトイ・クローズエンドトイの違いを知りたい
- 子どもにどんなおもちゃを選べばいいかわからない
- 海外で人気のある教育論ではどんなおもちゃが薦められているか知りたい
子どもとおもちゃを愛する年子( 2歳女の子、1歳男の子)の母。
ヨーロッパを研究対象にする人文系研究者として、日本語では手に入れにくい欧米言語のおもちゃ情報も日本語に訳してご紹介しています。
幼児教育について提供する内容は書籍や公的機関の見解に基づきます。
YouTubeではKAPLAの遊び方を発信中。
オープンエンド・クローズドエンドって何?
Open-Ended Toy:オープンエンド型のおもちゃとは
オープンエンドな遊びは子どもの自主性を促す自由な遊びとして知られています。
オープンエンド型のおもちゃは一般的に木や布などの自然素材でできており、子どもはおもちゃで遊びながら自分自身のアイデアやプロジェクトを探し出し、実験し、創造することができます。
自然の中で見つけられる木の枝や小石、あるいは生活の中で出てくるペットボトルの蓋や空き缶・ひもなどはルースパーツと呼ばれ、オープンエンド型のおもちゃとして幼稚園や保育園などでよく活用されています。
一方、市販されているオープンエンド型のおもちゃは一般的に想像力豊かな遊びを促すためにデザインされており、子どもの創造性や問題解決能力を育みます。
代表的な例は積み木です。
その他にも、(LEGOなどの)ブロック、劇遊びの小道具、粘土や絵の具などの画材などがあります。
最近注目される非認知能力や自己肯定感の向上にも役立つことが知られていますよ。
Close-Ended Toy:クローズエンド型のおもちゃとは
クローズドエンドな遊びは、わかりやすく、子どもの細かい運動能力を発達させるのに役立つ遊びとして知られています。
市販のおもちゃ、とくに電子的・機械的な構造をもつものに多い傾向があります。
例えば電池で動くロボットやリモコンのおもちゃ、コンピュータゲームなどが該当します。
そのような構造を持たないものとしては、パズルやボードゲームなどを想像するとわかりやすいでしょう。
クローズエンド型のおもちゃは、使い方に正解があって、目指すゴールがひとつであることが多いです。
限られた範囲での使い方しかできない代わりに、空間的推論や問題解決の能力、身体能力を育てるのに役立ちます。
オープンエンドトイはクローズエンドトイとしての機能も果たすことができる
オープンエンド型のおもちゃは使い方によってクローズエンド型のおもちゃに変身することがあります。
遊び方に制限がないのですから、当たり前といえば当たり前ですね。
例えば積み木ですごろくを作ったり、箱を使ってボール落としを作ったり。
当サイトでもご紹介しているMODUというブロックおもちゃは車やシーソー、すべり台など特定の使い方をするおもちゃに簡単に変身します。
他の使い方もできるため、オープンエンドトイは特定の機能を持つクローズエンドトイとしては長続きしない可能性が高いですが、おもちゃの種類を減らしたいのならオープンエンドトイは非常に便利に機能すると言えるでしょう。
オープンエンドトイとクローズエンドトイのメリット・デメリット
オープンエンドトイのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
「非認知能力」の向上を促すことができる 感覚遊びによって脳が育つ お金をかけずに集めることもできる | 遊び方がわからず、夢中になれないことがある 誤飲や危険な使い方に発展するリスクがある 散らかりやすい |
オープンエンドな遊びは、問題解決能力、創造力、想像力、自己を表現する能力、コミュニケーション能力、手先の運動能力の発達など、数値で測りにくい「非認知能力」の向上を促します。
また、さまざまな素材や触感を楽しむことで、手と目の連動を練習する機会にもなるでしょう。
手先を使えば使うほど、子どもの脳は鍛えられていきます。
幼少期は将来的な脳のはたらきの限界を決める大切な期間なので、たくさん使わせ、刺激してあげたいですね。
オープンエンドトイにはルースパーツと呼ばれる、自然や生活のなかで見つけられるような身近な素材も含まれます。
積み木やブロックなど、比較的量が必要なためにお金がかかる商品もありますが、逆に工夫次第でまったくお金のかからない素材集めから始められる点も魅力であると言えるでしょう。
このような点からさまざまな教育現場で推奨されるオープンエンド型の遊びですが、デメリットもあります。
例えば、身近に親やきょうだい、保育園・幼稚園のお友達など遊び方にヒントを与えてくれる存在がいなければ、どのように遊べば良いのかわからない場合があります。
よく「わが子が積み木で遊ばない」と悩む親御さんがいらっしゃいますが、初めからひとりで遊ばせていることが原因であることが多いそうです。
オープンエンドトイは基本的に抽象的な形をしているため、子どもたちにとってわかりやすいおもちゃではありません。
そのため、最初は誰かが遊びの世界をガイドしてあげる必要があります。
遊び方にヒントを与えてもらううちに子どもたちは目の前のオープンエンドトイの遊び方を知るのです。
また、子どもたちが散歩中に見つけるルースパーツのなかには、誤飲や怪我の危険性をはらむものもたくさんあります。
どんぐりは誤飲すると大変ですし、小石やガラスなどは怪我をしないように扱い方に気をつけなければなりません。
さらに言えば、オープンエンド型のおもちゃは量が多くなりがちな上に様々な要素を組み合わせやすい傾向があるため、散らかりやすいこともデメリットになります。
子どもが夢中になって遊んだあと、片付けの大変さを思ってため息の出てしまうご家庭も多いのではないでしょうか。
これらのデメリットを考え合わせると、オープンエンドトイは手のかかるおもちゃであると言えるかもしれませんね。
クローズエンドトイのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
遊び方がわかりやすく、手間がかからない 特定の能力を育みやすい | 遊びが単調になり、飽きやすい 複数人で遊びにくい |
一方、クローズエンド型の玩具は特定の目的を持って設計されています。
遊ぶ子どもも見守る大人も同じひとつのゴールを思い描けるため、オープンエンドトイに比べて誘導の必要が少なく、手間がかからない点はメリットであると言えるでしょう。
また遊びが展開していかないため、特定の能力を鍛えるという点では非常に有用です。
子どもは同じ動きを繰り返すことによって、オープンエンドトイより早く目的の能力を身につけることができるでしょう。
しかしひとつのおもちゃで特定の遊び方しかできないことは、デメリットにもなります。
子どもはおもちゃを前にすると、好奇心からさまざまな探求活動を始めるものです。
そしてそのおもちゃを研究し尽くしてしまうと、飽きてしまうと言われています。
クローズエンドトイはゴールが決まっているため、オープンエンドトイのように創造性や探究心を持続させることができず、すぐに飽きてしまうことが多いのです。
子どもが新しいおもちゃを次々に欲しがり、家におもちゃが溢れる場合はこの状況に陥っていないか確かめてみてください。
また歳の近いきょうだいがいる場合、クローズエンドトイはきょうだい喧嘩の原因になる傾向があります。
シェアしにくいものが多く、ひとつしかないと取り合いになってしまうのですね。
海外の教育理論とおもちゃの種類 | シュタイナー教育、レッジョ・エミリア教育、モンテッソーリ教育
オープンエンドトイを重視するシュタイナー教育とレッジョ・エミリア教育
海外の教育理論として有名なシュタイナー教育とレッジョ・エミリア教育は、オープンエンド型のおもちゃを重視しています。
シュタイナー教育において、自由な発想で遊べるオープンエンドトイは、子どもが自然界とつながり、創造的な探究心を育むために重要であると考えられています。
大人が子どものために特別なおもちゃを用意する必要はなく、ルースパーツを使っておもちゃを自作することが推奨されているのですね。
例えば積み木には拾ってきた木っ端(材木の切れ端)に蜜蝋ワックスを塗った手作りのものが使われています。
一方、レッジョ・エミリアのアプローチも、自由な発想のおもちゃに重点を置いています。
この教育論は、子どもが過ごす環境作りと個々の子どもの「経験」を探求することに重点を置いています。
オープンエンド型のおもちゃは子どもたちが自分の周りの世界を探検し、新しいものを発見することを促すため、レッジョ・エミリア教育のアプローチの重要な要素となっています。
クローズエンドトイと相性の良いモンテッソーリ教具
シュタイナー教育もレッジョ・エミリア教育もオープンエンド型のおもちゃを活用しますが、イタリアの医師であるマリア・モンテッソーリが提唱するモンテッソーリ教育は、オープンエンド型とクローズエンド型のおもちゃを組み合わせて使用することが知られています。
オープンエンドなおもちゃは創造的な遊びを促進するために重要ですが、モンテッソーリ教育では、運動能力や問題解決能力、手指の発達を促進するなど、獲得したい能力に集中するための「教具」が用意されています。
モンテッソーリの教具は、子どもがその活動に熱中する「敏感期」にしか使われません。
はじめから期間限定のおもちゃであることを前提にしている、究極のクローズエンドトイであると言えるでしょう。
知育になるおもちゃはどっち?
子どもにはオープンエンドトイを与えていればいいのか?
近年は詰め込み型の教育ではなく、AIに負けない人間らしさが重視されるようになってきました。
その影響もあり、クローズエンドトイよりもオープンエンドトイを推奨する流れがあるように思います。
しかし子どもの心身の発達を考えれば、オープンエンドトイだけで良いとは言えないでしょう。
どちらも揃えるとなると、どこにお金をかけるかを親が見極め、計画的におもちゃを買っていくことが大切です。
わたしのおすすめは、オープンエンドトイの中でも積み木やブロックにはしっかりお金をかける。そしてクローズエンドトイは比較的安価なものを活用する方法です。
「オープンエンドトイはルースパーツを使えばお金をかけずに済むんじゃないの?」
という声が聞こえてきそうですが、積み木とルースパーツの果たす役割は同じオープンエンドトイでも全然違いますよ。
精巧に作られた積み木やブロックは、子どもたちの世界を立体的にしてくれます。
身近なもので揃えるルースパーツはどうしても精密さに欠けるので、平面的な遊びになりがちです。
積み木やブロック(できれば色の抑えられたもの)を一緒に使うことによって、子どもたちの想像遊びの世界は広がるのです。
一方、特定の能力を獲得することに力点を置いたクローズエンドトイはできるだけシンプルなものを与えます。
まさにモンテッソーリの教具のイメージです。
子どもが集中的に遊んだ後それに飽きたら、そのおもちゃで身につけるべき能力は身についた、手放す時期がきたというサインだと思って新たな能力の獲得(別のクローズエンドトイ)に移りましょう。
一時的にしか使わないので、中古品などを含めて検討してみると良いと思います。
ただし、ボードゲームは別です。
ボードゲームは幼い頃だけでなく、思春期や大人になってからも家族のコミュニケーションツールとして機能します。
特定の身体的能力を育てる用途とは少し違うので、長い期間使うつもりで積極的に揃えておいてあげたいですね。
これまで述べてきたように、オープンエンドトイもクローズエンドトイも、目的は違えどどちらにも知育要素があります。
子どもに与えるおもちゃは、「知育玩具」と謳われている必要はないのです。
親にできることは「発達に沿った遊びの環境を整えてあげること」
おもちゃそのものの「知育」要素に頼るより、親がやってあげたいことは「発達に沿った遊びの環境を整えてあげること」です。
おもちゃを与える環境については、以下のような点に気をつける必要があります。
- おもちゃは子どもの発達段階にあっているか(前段階の動きをきちんと身につけているか)
- 用意されたオープンエンドトイに繋がりは見出せるか(組み合わせて遊べるか)
- おもちゃは多すぎないか
- おもちゃは見えているか
- 【理想】遊びの種類によって、スペースは分けられているか
対象年齢より早めに与えること=「知育」ではありません。
子どもをよく観察し、その時々の関心(敏感期)に応じたおもちゃを与えるようにしましょう。
オープンエンドトイは年齢によって遊び方が変わることで長く使えるため、他のおもちゃと組み合わせて遊べるかを考えながら揃えてあげましょう。
オススメは、やはり積み木を一定量用意しておくことです。
その上で、一緒に遊べるアイテムを少しずつ足していくのが良いと思います。
おもちゃを与えるときには、おもちゃ棚がぎっしりになっていないかも確認しましょう。
子どもは見えているものでしか遊ばないと言われます。
とくに乳幼児期は見えないものを知覚できないのです。
そのため、おもちゃ棚には余裕を持たせ、すべてを取り出しやすいように並べて配置することが基本になります。
おもちゃ棚についてはこちらの記事をご覧ください。
箱に入れて収納するときには、見える面に写真やイラストを貼るなどして、子どもがそのおもちゃを認識できるようにしましょう。
最後に、これは部屋の広さにもよるので理想論ですが、遊びの種類に応じてスペースを分けてあげることも大切です。
そうすることで、子どもはより一層遊びの世界に集中できるようになります。
まとめ | 子どものおもちゃは全体でバランスを調整しよう
この記事では、オープンエンドトイとクローズエンドトイについて解説し、親が子どものおもちゃ選びで気をつけてあげたいことについてまとめました。
抽象的な話も多かったですし、すべてを実践することは難しいでしょう。
しかし子どもの脳や身体の発達をサポートしたいのなら親はオープンエンドトイとクローズエンドトイの違いを理解し、両者のバランスを取るようにおもちゃの種類や量を調整してあげなくてはなりません。
このサイトでは、具体的なおもちゃの紹介のなかでそれがオープンエンド型の遊び・おもちゃなのか、クローズエンド型の遊び・おもちゃなのかを明示するようにしています。
今後のおもちゃ選びの参考になれば幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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