シュタイナー教育を乳幼児期のおもちゃ選びに取り入れる方法

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シュタイナー教育をご存知ですか?

海外のおもちゃのデザインにも取り入れられているシュタイナー教育は、世界で広く受け入れられている教育思想です。

シュタイナー学校に通わせるのには抵抗があるけれど子どもの芸術性を育むような育児がしたい、というご家庭にはぜひおすすめしたいこの教育。

この記事では、シュタイナー教育とはどんなもので、親は何に気を配ればよいのか。
どのようなおもちゃが乳幼児期の発達を助けてくれるのかについて解説します。

目次

シュタイナー教育の思想

シュタイナー教育をおもちゃ選びや子どもとのかかわり方に取り入れるにあたって気をつけなければならないことがあります。それは、

方法論だけを切り離して実践すること。

シュタイナー教育の根底には、提唱者であるルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, 1861–1925)の深い哲学思想があります。

その思想に触れずして方法論だけを切り離して実践すると単なるまねごとになってしまい、重要なエッセンスが消えてしまうことにもなりかねません。

そのため、この記事ではまずその思想をご紹介してから、おもちゃ選びの話に入っていきたいと思います。

シュタイナー教育を支える思想=「人智学(アントロポゾフィーAnthroposophie)」

「人智学」は、よりわかりやすい言葉に置き換えると「人間の知恵」を意味します。

人間の知恵というからには、その対象は教育だけでなく、芸術や宗教、医学、社会論、宇宙論、農学、経済学、建築など広大な範囲におよびます。

シュタイナーは、人間は「からだ」「こころ」「精神」が7年周期で発達していくと考えました。

そして、その周期に合った教育を通して「自分のなすべきこと*」を知り、それを自らの意志で遂行できる「自由」を獲得することが、シュタイナー教育の目指すべきものであるとされています。
*自分のなすべきこととは、「自分のしたいこと」と「せねばならないこと」が一体化した状態のこと

7年周期の発達のめやすについては、以下の表をご覧ください。

この表によれば、子どもは意志〈意〉→感情〈情〉→思考〈知〉の順番で育まれる必要があります。

だから第2・7年期(14歳)までは感情を通して知的な事柄を学ぶことが大切にされ、抽象的な事柄を抽象的なまま子どもに伝える(=知性に直接はたらきかける)ことは避けられるのです。

発達7年周期年齢のめやすテーマ説明
第1期 からだ第1・7年期0〜7歳「善」【乳幼児期】意志を育む時期。からだがもっとも育つ時期。神経・感覚器官が発達。「遊び」が成長を助ける。「世界は善である」と感じられることが重要。
第2・7年期7〜14歳「美」【児童期】感情を育む時期。循環器系が発達。呼吸のリズムが整い、臓器がほぼ大人と同じ大きさに。「世界は美しい」と感じられることが重要。
第3・7年期14〜21歳「真実」【青年期】思考を育む時期。代謝系が整う。「理想」が教師。「世界には真実がある」と感じられることが重要。
第2期 こころ第4・7年期21〜28歳「関係性」自我が生まれる。「怒り」が助けに。新たな世界と出会い、さまざまな関係性を築いていく。理想と現実のギャップを感じる。
第5・7年期28〜35歳「構築」人生を組み立て、地に足をつける時期。新しい家族や責任ある仕事など、さまざまなものを構築する。困難に遭遇する激動の時期。エゴイストになる危険も。
第6・7年期35〜42歳「問い」本質に向かって自覚的に生きる。物質的な生き方から精神的な生き方への変容が迫られる。さまざまな「問い」が生まれる。本来の自分を探す。
第3期 精神第7・7年期42〜49歳「葛藤」新たな価値観やものの見方を獲得する時期。理想と現実、衰えていく肉体と賢明な知恵など、相反する二者の間で葛藤する。これまでに得たものを人に与える側に回る。
第8・7年期49〜56歳「創造性」体の衰えとともに新たな自分のリズムを見いだす時期。これまでと同じリズムでいると、からだを壊す危険性がある。人生の本質に向かい、内なる創造性を発揮する。
第9・7年期56〜63歳「本質」人生をふり返り、洞察を深める時期。人生の本質に目覚める。病気と向き合い始める時期でもある。
「からだ」「こころ」「精神」の発達のめやす(『マンガでやさしくわかるシュタイナー教育』74ページより抜粋)

乳幼児期に育むべき感覚

シュタイナーの人間観に、「十二感覚論」というものがあります。「五感」を発展させたものですね。

この12の感覚は、家に例えられるそうです。

家

十二感覚論は3階建ての家のイメージで、発達順は下から上です。

上位の感覚:
主として思考の活動に関わる
聴覚・言語感覚・思考感覚・自我感覚
中位の感覚:
主として感情の活動に関わる
嗅覚・味覚・視覚・熱感覚
下位の感覚:
主として意志の活動に関わる
触覚・生命感覚・運動感覚・平衡感覚
『マンガでやさしくわかるシュタイナー教育』158ページ

乳幼児期に育むことが重要とされる感覚は下位の感覚、つまり触覚・生命感覚・運動感覚・平衡感覚です。

触覚はからだでものに触れる感覚のことで、直接の体験(本物に触れること)から育まれます

だからシュタイナー教育では子どもにテレビを見せることは避けるべきだと考えられています。

生命感覚とは、自分のからだの調子を知覚する感覚です。

これを育むためには、生活のリズムを整えることが重要と考えられています。

運動感覚とは、自分のからだの動きを知覚するための感覚です。

運動感覚を育てるには、無秩序に動き回ればよいというわけではなく、動きに形を与えてあげることが重要なのだそうです。

平衡感覚は、自分のからだのバランスを知覚する感覚です。

バランスを取る遊びのなかで育まれますが、ここで育まれたバランスは方程式の理解や人との適切な距離感を測るのにも役立つそうです。

シュタイナー教育の特徴

シュタイナー教育は、教育を芸術とみなします(教育芸術)。

シュタイナー学校に通う子どもたちは、すべての教科を芸術的に学んでいるのです。

例えば算数はよくあるような抽象的な概念によってとらえられるのではなく、直観的・芸術的に子どもたちのうちに刻み込まれることが大切にされます。

ここでは九九の例をご紹介します。
九九は暗唱するものではなく、糸かけの活動を通して美しさとともに記憶されるもののようです。

上で述べたように、直接知性にはたらきかけるのではなく、感情やからだの感覚を通して知的な事柄を学ぶということがよくわかる例ですね。

シュタイナー教育では、芸術的に世界をとらえることにより、世界を生き生きと把握することが目指されています。

また、幼児期から6・7年生まで行われる「ぬらし絵/にじみ絵」と呼ばれる活動に代表されるように、色彩の世界を全身で感じるプロセスも大切にされています。

シュタイナーには独自の色彩論があり、ぬらし絵のような活動を通して色彩をからだ全体で学ぶのだそうです。
(シュタイナーの色彩論についてはここでは割愛します)

大人は自身も発達の途上にいることを自覚し、お手本としてふるまうことを心がける

第1・7年期(7歳まで)の乳幼児は模倣を通じて学びます。

この「模倣」は単に外側にあらわれでている大人の言動に限らず、心の内側までも対象になります

だから大人は自らが子どもにとってのお手本・モデルであるという自覚を持ち続けなければなりません。

しかし上の表からわかる通り、大人は大人でこころの発達段階にいます
「完成」されてなどいないのです。

大人自身も子育てを通じてさまざまな課題と向き合っていくことになるので、シュタイナー教育では、親の発達と子どもの発達は連動させてとらえられます。

子どもひとりひとりの個性と向き合う

シュタイナーは、子どもの個性が4つの気質の掛け合わせによって作られると考えていました。

気質性格
胆汁質エネルギーに満ち溢れており、意志が強い。行動力・正義感がある。達成感を得ることを重視している。怒りっぽく、融通がきかない。
多血質明るい。軽やか。子どもっぽくて飽きっぽい性格。忘れっぽい。ものごとを深く考えない傾向あり。叱っても傷つかないですぐに立ち直る。
粘液質のんびり屋。マイペース。時間内に作業を終わらせるのが苦手。丁寧。興味があることには集中する。
憂鬱質物事に深く関わり、自己の内に深く沈潜する。ひとりでいる時間が好き。人と関わるのは苦手。芸術性が高い。些細なことで傷つく。
シュタイナーの気質論(『漫画でやさしくわかるシュタイナー教育』121ページより抜粋)

このように分類されてはいますが、子どもは多かれ少なかれ多血質的な傾向を示すもので、本来の気質は7歳以降に徐々に現れるとも言われています。

大切なのは、子どものタイプに応じてはたらきかけの仕方を変え、ポジティブな要素を伸ばしていくこと
そして親が自身の気質を理解しておくことです。

ただし、気質論は時と場合によっては相手に対する思い込みやレッテル貼りに発展するため、注意が必要です。

「あなたはこうだから」と決めつけられるの、嫌じゃないですか?
わたしは自身の気質について、多血質以外はどの特徴も部分的に当てはまると感じました。

気質の把握は多様な子どもの姿を理解するための参考でしかありません。

もっとも大切なのは、子どもたちのありのままの様子を注意深く観察することだということを忘れないでください。

参考文献

ここまでに紹介してきたシュタイナー教育の思想は、井藤元さんの『マンガでやさしくわかるシュタイナー教育』を参考にしました。

マンガによる具体例の紹介と詳しすぎない解説がとてもわかりやすく、入門書にもってこいだと思います。

学校教育に関する部分など省略した部分も多々ありますので、シュタイナー教育についてもっと知りたいという方はこちらをご参照ください。

第1・7年期(乳幼児期)の子どもとおもちゃ

それでは、いよいよおもちゃについての話にまいりたいと思います。

幼児

幼児期の子どもたちにとって、遊びと学習は切り離せません。

では、そんな子どもたちにどのようなおもちゃを与えればよいのでしょうか。

おもちゃについてのシュタイナー教育の基本的な考え方

幼児期の子どもたちは、ファンタジーの世界を生きています。(中略)遊びをつうじて子どもはファンタジーの世界に浸り、世界と出会っていくのです。

『マンガでやさしくわかるシュタイナー教育』153ページ

ファンタジーの世界に浸っている子どもたちの想像力・創造力は、しばしば大人を驚かせるものです。

だから、シュタイナー幼稚園に用意されているおもちゃは、見立て方によって何にでも形を変えるものばかり。

単純であればあるほどよいので、身近にある自然の贈り物が想像力をかきたてるおもちゃとなるのだそうです。

この考え方に従えば、子どもたちには特別なおもちゃを用意する必要はなく、自然のなかで遊ぶことが何より大切なように思えます。

小石

しかし、子どもたちが皆ひとたび外に出れば小枝や小石が見つかるような環境に住んでいるとは限りません。

そこで、今回は市販品を購入するならという観点で理想のおもちゃについて考えてみました。

市販品を買うならどんなポイントを押さえればいいのか?

わたしは市販品だからといって、頭ごなしに否定する必要はないと思っています。

例えばグリムス社の商品にはシュタイナー教育の考え方が反映されており、色彩や素材から自然を感じる工夫が施されています。

このように、おもちゃメーカーのなかにはシュタイナー教育の影響を明示している場合もありますが、そうでなくても適したおもちゃはあります。

これまでの思想を踏まえると、おそらくおもちゃを選ぶときのポイントは3つほどあると思います。

  • 自然のもの(本物)と一緒に遊べるオープンエンドトイ
  • 色彩をからだ全体で感じられるもの
  • 平衡感覚を育めるもの

自然のもの(本物)と一緒に遊べるオープンエンドトイ

まずはオープンエンドトイと呼ばれる、遊びかたに制限のないおもちゃです。
代表的なものは積み木ですね。

シュタイナー教育の積み木は、木っ端にヤスリをかけ、蜜蝋を塗って作られます。

これに似た積み木として、ここではマジックウッド社のツリーブロックスという積み木をご紹介します。 

ツリーブロックスは、自然木の触感をそのまま(木肌が削がれずに残っています)に基尺2cmに加工された積み木です。

枝のような細いものから板のようなものまで入っていて、ひとつとして同じ形はありません。
それでいて高さは基尺でそろえてあるので、積んだときのバランスは取りやすくなっています。

つまり、触覚で本物の感覚を楽しみながら、平衡感覚も育めるおもちゃということができると思います。

他にも、Grapatシリーズも自然物と一緒に遊ぶことを想定して作られています。

Grapatは抽象的で単純な形をしており、子どもの想像力を邪魔しない配慮がなされています。

だから子どもたちは自分で遊びかたを決め、安心してファンタジーの世界に思う存分浸ることができます。

色彩をからだ全体で感じられるもの

色彩感覚を育むという点では、やはり絵の具やクレヨンなどで遊ぶことが一番でしょう。

しかしここではあえてサラズシルクという布のおもちゃをご紹介します。

サラズシルクもシュタイナー教育の影響を明示しているメーカーのひとつです。

このおもちゃは多様で豊かな色彩と本物のシルクの触感を楽しめます。

そしてプレイシルクというだけあって、マントにしたり、光に透かして遊んだり。
遊びかたは自在で、からだ全体で色の世界を体験できます。

うちの子は0歳の頃からこのサラズシルクでいないいないばあをするのが大好きです。
このおもちゃについてはいずれもう少し詳細な紹介記事を書きたいと思います。

平衡感覚を育めるもの

最後に、運動おもちゃとして平衡感覚を育めるものをご紹介します。

わが家のイチオシおもちゃ、MODUです。

MODUは車を作って漕ぐだけでもバランスを取ることが必要なおもちゃですが、そのほかにも平衡感覚を育むのにぴったりな遊びがたくさんあります。

例えば、

  • ただブロックを並べて平均台のようにして遊ぶ
  • ブロックを少し離して置けば飛び石になる
  • ブロックを階段状に積めば登ることもできる
  • シーソーを作ることもできる

まさに万能おもちゃらしい幅広さですね。

平衡感覚を育むおもちゃで家に置けるもののなかでは、これに遊びの幅で勝るものはないと思っています。

まとめ

今回は、シュタイナー教育の思想とその思想をおうち遊びに取り入れるためのおすすめ市販品おもちゃについてご紹介しました。

高価なおもちゃを必要とせず、本物の体験として自然物と遊ぶことを推奨するシュタイナー教育ですが、住んでいる環境や親が子どもと関われる時間などの制限によって実践が妨げられることはシュタイナー自身も本望ではないでしょう。

市販品もうまく活用しながら、シュタイナー教育のエッセンスを子育てに取り入れていきたいものです。

この記事でご紹介したように、わが家のおもちゃはシュタイナー教育をはじめ、色々な教育論の影響を色濃く受けています。

それぞれについてもこれから記事にしていく予定ですので、ご興味があればHOMEから覗いてみてください。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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